当学会の勝手に顧問と呼んでいる、園芸家の柳生真吾さんからお電話をいただいた。
こんど出る本のあとがきを書いたので、送ります。とのこと。
感激である。
本とは、名著・カレルチャペックの「園芸家12カ月」の新訳なのだそうで。
くわしくはまた本が届いてからにするとして、そんなこともあって手元にある同書の中公文庫版を久しぶりに開いてみた。
たまたま「7月の園芸家」の章にしおりがはさまっていたのでそこから読み出す。
すると……
「植物に(中略)いろいろの区分があることは、ご承知のとおりだ。つまり、原産地と、その植物の見出される場所、繁茂している場所によって区分されているのだ。
諸君がもしいくらかでも植物に興味をもっていたなら、カフェーには、たとえば燻製品専門店とは別の植物が茂っていることに気がつくだろう。また、ある種、ある属の植物は、駅では非常に成育がよく、ある植物は踏切りの番小屋で好成績をあげていることに気がつくだろう」
すぐにわたしは「これだ」と思った。
当学会では路地裏、下町、住宅街など特徴ある古き良き街をたずねては園芸を見て歩いてきたが、いまひとつフィールドワークとしての方向を決められないまま、漫然と時だけが過ぎていた。
チャペック先生がすでにはじめていた植物地誌。
わたしは昼休みを延長して、事務所から自転車を停めたままにしてあった押上駅まで歩いてみることにした。
わずか直線距離1.5キロほどの道のりだが、とりあえず商店と園芸に向かって記録を撮ることにした。
理容店
ナンテン、フウセンカズラ、ハナニラ、ドラセナ(かな)、ゼラニウム、盆栽、猫よけペットボトルなど
米店
園芸なし
不動産仲介
かわいいお花系、緑の寄せ植え系
床屋さん
釣り花系、ヨモギみたいな系、ビオラ系、ハナニラ
ハンコ店
園芸なし
そば店
ミニシクラメン、サルビア、ニチニチソウ
クリーニング店
ノウゼンカズラ
魚や
園芸なし
学習塾
カポック、アロエ
ワインバー
ブドウ
製●所
でかいドラセナ系
鍼灸院
青じそ、ヒイラギぽい、アロエ
薬局
園芸なし
鉄道線路脇
セイタカアワダチソウ
以上であった。
米店はほかにもあったが、やはり園芸はなし。
薬局も同様である。
すでに若干だが傾向が現れている。
また、柳生顧問は以前、鉢植えだけを見て、その店がそばやであることを言い当ててみせた。
やはりわが国ならではの植物地誌があるに違いない。
明日はもう少し都会を見て歩く予定です。